日本ファンクショナルダイエット協会
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牧草牛肉は国産化できる!

斎藤糧三副理事長も目からウロコの「放牧肉用牛シンポジウム」

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さる2月27日、一般社団法人日本草地畜産種子協会主催の「放牧肉用牛シンポジウム」に斎藤副理事長が参加し、ケトジェニックダイエットを大いにアピールしました。




牧草牛は理想のケト食


日本ファンクショナルダイエット協会(JFDA)が推奨する代表的な食材といえば……そう、赤身牛肉です。それも有機栽培の牧草地で育てられた健康的な牛のお肉がオススメです。運動もしている「牧草牛」はタンパク質が豊富で低カロリー、必須脂肪酸であるオメガ3とオメガ6のバランスが理想的で、亜鉛の含有率が鶏や豚よりはるかに高く、鉄分、ビタミン等もバッチリ、人間は原始時代から食べていますからアレルギーの心配もありません。

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医師でJFDA副理事長の斎藤糧三先生は、著書の『腹いっぱい牛肉を食べて1週間で5kg減! ケトジェニック・ダイエット』(ソフトバンク新書)のなかで、「牛はもともと草食動物。穀物や豆類を食べて育つようには生まれついていません。ですから、牛の生理にもっとも適した育てられ方をした牧草牛をおすすめしたい」(同書p110)と書いています。

斎藤先生自身が牛肉好きということもあるようですけれど、昨年、麻布十番に「Saito Farm」という日本初の牧草牛専門精肉店をオープン、リアル店舗を構えることで健康ケトジェニック食としての牧草牛を国民に認知してもらおうという戦略を展開中です。

問題は、おそらく日本は国土が狭い、という先入観によるものでしょう、国産の牧草牛がないことです。「Saito Farm」ではニュージーランド産のグラスフェッド・ビーフを主力商品にしていますが、より理想を高く、「地産地消」が望ましい、と斎藤先生は考え始めました。

さる2月27日、一般社団法人日本草地畜産種子協会主催の「放牧肉用牛シンポジウム」が東京文京区湯島の全国家電会館で開かれたのは斎藤先生にとってまことにグッド・タイミングでした。斎藤先生も、このシンポジウムに講演者のひとりとして参加し、「牛肉は健康食である」という自説を披露。牛肉はおいしいけれど、カロリーが高いから太る、という俗説をコペルニクス的にひっくり返す主張に、とりわけ畜産関係者は溜飲が下がる思いをされたのではないでしょうか。

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でも、このシンポジウムに参加して一番よかったと思っているのは、斎藤先生だったかもしれません。というのも、「放牧技術の新たな展開とそのポテンシャルを探る」というテーマに沿った講演者たちのプレゼンテーションによって、斎藤先生は確信できたからです、国産の牧草牛は可能なのだ、ということを。

ケトジェニックダイエットを実践するために牛肉の問題は避けて通れません。安心・安全、健康的な牛肉が手の届く価格で安定して手に入らなければ、健康・長寿も絵に描いたもちです。




放牧のメリットとは?


読者諸兄にざっくりご理解いただくために、「放牧肉用牛シンポジウム」のプログラムをご紹介しておきましょう。以下、講演のタイトルと講演者です。

1)「日本の食料生産と地域創生を支える放牧技術のポテンシャル」後藤貴文氏(鹿児島大学農学部)
2)「放牧による肉用子牛の低コスト生産技術」永松英治氏(永松牧場)
3)「食肉生産としての放牧技術のポテンシャル」小笠原英毅氏(北里大学獣医学部付属フィールドサイエンスセンター)
4)「消費者が求める牛肉の現在と未来:消費者とシェフが支える農業」千葉祐士氏(株式会社門崎)
5)「日本の健康を支える放牧のポテンシャル ―牧草牛の可能性――」斎藤糧三氏
6)「放牧を取り入れた畜産と消費者と生産者の絆」田中一馬氏(田中畜産)

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座長の萬田富治氏(生物化学安全研究所 顧問)。



日本で和牛の放牧を試みることのメリットはなにか? これについては、シンポジウムの座長をつとめた萬田富治氏(生物化学安全研究所 顧問)が冒頭に「座長解題」として語っています。

大前提として、日本の畜産業界はTPPをはじめとする、諸外国からの圧力によって押しつぶされそうになっています。安全・安心な畜産物を自国で確保すべきなのに……。 逆境のなか、畜産を産業として成り立たせるのに重要なことは農家の所得をちゃんと確保すること、生産コストを下げることのふたつである。そして、このふたつは自然循環型の放牧によって解決できる、と萬田氏は訴えました。

放牧飼育であれば、諸外国からの輸入に頼っている飼料を購入する必要がない。牛にひとが給仕する必要もない。飼料代も人件費も大幅に抑えることができます。糞尿処理の問題もなくなり、労働時間は短くできるうえに牛は健康的に育つ。じつはいま日本で減少傾向にある放牧主体の牛の飼い方をいまこそ広めていきたい。そう萬田氏は締めくくりました。

持ち時間40分の講演はどれも注目に値するものでした。なかでも、南と北、九州と北海道でそれぞれ放牧技術のポテンシャルについて語った後藤貴文氏と小笠原英毅氏の講演は、門外漢にも興味深いものでした。





Q Beefで「しくみを変える」

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後藤貴文・鹿児島大学教授。国産植物資源を活用する牛肉生産システムの開発研究者。



トップ・バッターの現・鹿児島大学の教授の後藤氏の講演内容をかいつまんでご紹介しましょう。

後藤教授によれば、穀物で牛を育てる場合、1kgの牛肉を生産するのに20.6トンもの水を必要とします。現在の地球人口は73億5000万人。発展途上国では8億人が飢餓状態にあります。それなのに、世界で生産されている穀物のうちの3割、トウモロコシの8割が家畜の餌に使われています。「穀物は“人”のために使うべきである」という後藤教授の主張に大いに賛同できます。畜産というのは水問題=環境問題であり、食料問題でもあるわけです。

日本の農家にとっては経済問題でもあります。日本は牛の飼料の7割以上を輸入に頼っており、和牛1頭育てるのに30カ月、5000kgの穀物を必要とします。平成26年の農林水産省のデータでは、和牛の生産費は1頭101万円、生産時間20カ月、利益はたったの4万5000円。これでは農家もやる気がしないのは当然でしょう(生産時間が20カ月というのは、日本は子牛の生産農家と、子牛を買ってきて肥育する農家が分業しているからです)。


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意識の高い消費者を育てることの重要性を訴える。



安い牛肉が海外から入ってくるようになったおかげで、消費者としてはありがたいのですけれど、日本が外国産牛肉に支払っている金額は平成26年度のデータで3650億円にのぼります。このお金を国内でまわせないか、というのが後藤教授の問題提起です。輸入している飼料代を加えれば、さらに膨大な金額になります。

他方、たとえば自動車ビジネスでは、200万円の自動車を1台販売すると、製造会社の取り分は6割の120万円で、製造原価、人件費、諸経費を差し引いた利益は2割で、24万円。販売店の取り分は4割の80万円で、人件費と諸経費を差し引いた利益は16万円。和牛1頭を20カ月もかけて育てた農家の利益がいかに小さいか、よくわかります。 「しくみを変える」。これが後藤教授のテーマです。狭い土地を言い訳にせず、放牧すれば、牛が牧草を食べ、食べた食物の種子が糞と一緒に排出されるので、そこにまた牧草が育ちます。それを牛が食べる、という自然循環ができあがれば、飼料代はタダになります!

日本の国土の面積は3779万ヘクタール。そのうちの66.4%が森林で、使っているのは30%に過ぎません。山や耕作放棄地、離島など未利用地を活用すれば、肉用牛の放牧は十分可能、というのが後藤教授の見立てです。

小柄な黒毛和牛を牧草だけで生産するハンディを克服する後藤教授独自のアイディアが「代謝プリンティング」です。ようするに胎児期や初期成長期に栄養をたっぷり与えて太る体質をつけさせる。これによって、産肉量が500kgから600kgへと飛躍的に改善できます。この「代謝プリンティング」と放牧の組み合わせによって生まれたのが、後藤教授が開発した九州大学の「Q Beef」ブランドです。






有機100%の「北里八雲牛」

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小笠原英毅・北里大学獣医学部付属フィールドサイエンスセンター八雲牧場助教。肉用牛で先駆的に有機JAS認証を取得。



北の大地で、「北里八雲牛」ブランドの有機JAS認定放牧畜産牛を育てているのが、北里大学獣医学部付属フィールドサイエンスセンター八雲牧場助教の小笠原英毅氏です。小笠原助教は「牛を草だけで育てるとウシと牛肉はどうなる?」という研究テーマを掲げる一方で、環境保全型の牛肉生産を実践しています。

北里八雲牛は、日本短角種と、日本短角種とフランス原産のサレール種のハイブリッドの、いわゆる赤毛和牛とサレール種をかけあわせたハイブリッドが主要品種で、夏のあいだ、3年間化学肥料や農薬が使われていない、有機管理された草地で放牧されています。寒い冬、11月から4月までは厩舎で育てられますが、飼料は夏に刈り取った牧草を使っています。100%有機でしかも自前の飼料、という画期的な試みです。

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牛肉の評価はA5とかA4とか、焼肉屋さんでよく見かけますが、あれは見た目の脂肪、サシの入り具合を表しているだけで、健康的な牛かどうかとなると、また話は別です。北里八雲牛は脂肪は少なくて、色は紫に近いほど濃いため、現在の牛肉の評価基準に照らすと、最悪になります。

評価基準が間違っている、といえばそういう言い方もできますが、これまでのルールを変えるのは簡単なことではありません。ビジネス的にいえば、100%有機自給飼料という価値観でつながる意識の高い消費者、新しいマーケットを開拓する必要があるわけです。






繁殖和牛周年親子放牧のすすめ

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永松英治・冨貴茶園代表取締役。茶園の裏山で肉牛を放牧、通常の3分の1のコストで子牛を生産。



プログラムの2番目の冨貴茶園代表取締役・永松英治氏の講演「繁殖和牛周年親子放牧のすすめ」は、斎藤先生を瞠目させるものでした。永松氏は大分県豊後高田市で、黒毛和牛を1年中、台風が来ても、雪が降っても放牧しているというのです。

冨貴茶園は茶園という名前が示すように、本業はお茶の栽培・加工・販売で、農林水産省が食の安全に取り組む農場に与える認証「JGAP(ジェイギャップ)」を取得しています。お茶の生産から仕上げまでを対象にこの認証を得たのは全国で初めてだそうですから、意識の高い生産者だといえるでしょう。

放牧を始めたのは、平成17(2005)年からで、大分県のレンタカウ制度を利用して1年間、何もわからず3頭の妊娠牛を借りて放牧をしてみたそうです。餌はあげた記憶がない。放牧場はジャングルみたいで、牛を探すのも1~2時間もかかるような状態だった。けれど、牛は死ぬこともなく、無事に出産。これがきっかけになって、翌年、2頭の妊娠牛を導入し放牧しました。すると、ジャングル状態だった牧場で牛が草を食べたことから、だんだん見通しがよくなって、大きな木だけが残った。牛が景観も変えてしまったのです。

現在の放牧場の面積は22ヘクタール、母牛は38頭に増え、昨年販売した子牛は11頭(オス10頭、メス1頭)で、14頭のメスを持っています。
永松式放牧の特徴は3つあります。

1. 雨が降っても雪が降っても、台風が来ても1年中放牧している。そもそも牛舎がありません。
2. 生まれてから出荷するまで親子放牧である。
3. 子牛が生まれてすぐからスキンシップをはじめて、調教する。

斎藤先生が注目したのは永松式周年放牧のメリットとして公開された餌代と子牛の出荷平均単価です。放牧といっても、母牛にはフスマを1日2回、2kg、冬のあいだはWCS(ホール・クロップ・サイレージ=発酵粗飼料)を1日12kgほど与えています。フスマの目的は太らせるためではなくて、牛の方からそれを目当てに集まってくるように習慣づけるためです。このときに発情や病気の発見、治療をするのです。

子牛が生まれてから10カ月で出荷するまでの親子の餌代は約8万2000円。全国平均の飼料代17万5307円の半分以下です。4月20日から12月20日まで、牧草を主食とするおかげです。

放牧のメリットその2は糞尿処理施設がいらないことです。永松牧場ではソーラー発電は使っていますが、電気も来ていない。油も使っていません。環境にもやさしいわけです。

それでいて、平成28~29年で、オス23頭、メス2頭、合計24頭の子牛を出荷しました。平均単価は73万7813円で、放牧飼育だからといって売値が安かったわけではありません。出荷平均日齢は276.3日、出荷平均体重は297.4kgでした。ちなみに子牛はそのままレストランに行くわけではなくて、牛の肥育農家のところで、立派な肉用牛となるべく20~30カ月育てられます。

永松氏が公表した平成29年度の財務状況によれば、売上高は763万4000円。売上総利益は441万378円で、経常利益は377万980円でした。放牧で母牛に子育てを任せておけば、子牛の繁殖経営は儲かるのです。

永松英治氏の「繁殖和牛周年親子放牧のすすめ」に瞠目した理由がおわかりになったでしょうか。ドクター斎藤はこの公開された永松氏の財務表を見て、文字通りのSaito Farm、つまりリアル斎藤牧場を開くという夢を現実にしようと心に誓ったのでした。


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